民法369条 抵当権の内容
1項 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供(きょう)した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する
解説
他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有するというのは
いったん債務者に債務不履行があった場合には不動産を競売にかけてその代金から優先して弁済をうけることができる
事例
AはXに商売の運転資金として100万円を貸し付けた
その後XはBから100万円、Cから200万円を借りて破産してしまった
Xの財産は100円の建物だけです
問題点
Xは3人から合計400万円借りているが財産は100円の建物しかない
解説
Aが先に貸したとかCが一番たくさん貸しているとかは問題になりません
債権者(ABC)は互いに平等です(債権者平等原則)
400万円の債権総額に対して100万しかXの一般財産がありませんから
貸した金額から割合を出して
Aが返済してもらえる金額 25万円(25%)
Bが返済してもらえる金額 25万円(25%)
Cが返済してもらえる金額 50万円(50%)
になります
これで破産手続きは終了です
民法369条 抵当権の内容を使う
Aはお金を貸した時に担保物権を使います(抵当権)
Aはお金を貸した時にXの建物に『抵当権を設定』して登記を受けていれば
Xが破産した時にXの建物を競売にかけてその代金から弁済を受けます
(抵当権は目的不動産の交換価値を把握する物権)
この場合
Aが返済してもらえる金額 100万円(100%)
Bが返済してもらえる金額 0万円(0%)
Cが返済してもらえる金額 0万円(0%)
これが抵当権の『物権』としての強力な効力です
一般的に『物権』の効力は『債権』よりも強いです
語句の意味
債権者平等原則…同一債務者に多数の債権者がいる場合、債権発生の時期や原因を問わず、債務者の責任財産から平等に弁済を受けるという原則
(債権者に平等に泣いてもらうという原則)
担保物権…一定の物を債権の担保に供することを目的とする物権
民法上、留置権、先取特権、質権、抵当権の四種がある
抵当権…不動産の場合、その所有者が、住宅ローンが払えないなどの債務不履行に陥った場合に担保として設定される権利のこと
交換価値…不動産の価格(競売代金)
競売…多くの買い手に値段をつけさせ、最も高い値段をつけた人に売る方法
一般財産(責任財産)…Xの財産の中でYが差し押さえることのできる財産
(一般財産=総財産ー担保権者が支配する財産)