民法1条 基本原則
1項 私権は公共の福祉に適合しなければならない
2項 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない
3項 権利の濫用(らんよう)はこれを許さない
2項を信義則、3項を権利濫用といいます
裁判所の最後の手段です

事例
Aはある土地で事業を営んでいる
安価な土地だがAが商売にとってはとても大事な場所だ
その場所を動くことはAの商売にとって致命傷になる
しかし、その土地の名義人がYのままであることに目をつけたXは、Yからその登記を譲り受けて、Aに法外な値段で売りつける事を計画していた
そして登記を得たXはAに対して登記がないならAは出て行けという起訴を起こし
そして、Aに高い値段で土地を買い取らせようとした
問題点
名義で登記していない
XはAが登記していない事をいいことにAに高い値段で買い取らせようとした
二重譲渡の問題です
結論

AはXに所有権を対抗できません
XはAに所有権を対抗できます
Aには土地の利用権がありませんから不法占拠者という民法上の位置づけになります
Xの勝ちとなります
しかし、裁判所は2項の信義則を用いて、Xは単なる悪意者ではなく、Xの請求は民法の大原則である信義則に当てはまらない
背信的悪意者としAの登記の欠缺(けんけつ)を主張する正当な利益があるとはいえない
よってXは負けとなります
大判明41.12.15
最判昭43.8.2の判例
事実上、物権変動があったことを知る者が、右物権変動について登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる場合、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張する正当利益を有せず、民法177条がいう第三者にあたらない
XがYから本件土地を買い受け、20年以上にわたって占有していることを知ったXが、その登記がされていないことに乗じて、Aに高値で売りつける目的でYから本件土地を買い取ったという事情のもとでは、Xは背信的悪意者であり、Aは登記しなくしてXに対して所有権を対抗することができる

語句の意味

対抗…効力の生じた法律関係を第三者に主張すること
登記…登記簿に権利者として記載してもらうこと
物権の得喪(とくそう)…所有権を得ること、失うことと
物権変動…物権の発生、変更、消滅の総称
物権…用益権と担保権と占有権がある
用益権…所有権、地上権、永小作権、地役権(ちえき権)
担保権…抵当権、質権、先取特権、留置権
背信的悪意者…物権変動の際、事実を知っていて,その物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義則に反すると第三者から除外される程度にまで著しい悪意者
公示の原則…排他的な権利変動は登記、占有等の外部から認識できる表象で外部に公示し権利関係を知らしめるべきだという原則
欠缺…ある要件の欠けていること
大判明41.12.15…大審院(戦前の最高裁に該当)明治41年12月15日の裁判例