民法184条 指図(さしず)による占有移転
代理人Xによって占有する場合、本人Aがその代理人に以後第三者Yにのためにその物の占有を命じ、第三者Yがこれを承諾した時はその第三者Yは占有権を取得する。
所有移転の方法
1.現実の移転(民法182条1項) (即時取得は適応される)
動産を現実に手渡す
2.簡易の引渡し(民法182条2項) (即時取得は適応される)
もともと預けてあった宝石をそのまま売る
3.指図による占有移転(民法184条) (即時取得は適応される)
倉庫業者に預けてある動産を買主の承諾の得て元の持ち主が倉庫業者に以後買主の為に動産を占有しなさいと命じる
4.占有改定(民法183条) (即時取得は適応されない)
元の持ち主が今後は買主の為に動産を所持するという意思を表示する
事例
宝石の持ち主AがXに宝石を貸した
その宝石をXはYに売ってしまった
Yは過失もなくXが真実の所有者と信じていた
YはXから宝石を引き渡しもらわずXに預かって欲しいと言い、Xもこれを了承した
占有者…Xの事
占有物…宝石の事
問題点
宝石は元々Aの物
今は宝石をXが所持している事
Yは宝石を占有し始めたのか?
裁判所の判決
民法上は.占有改定(民法183条)が当てはまるのでYのものになるが
実際はYのものにならない
裁判所の見解
本条による権利取得の為には、一般外見上従来の占有状態を変更する占有を取得する事を要する
最判昭35.2.11
要するにYは宝石をXから引き渡してもらわないと所有権の即時取得することはできない
語句の意味
占有…自己のためにする意思で物を所持すること
     所持とは物を事実上支配する状態
過失…一定の事実を認識可能だったにもかかわらず、不注意で認識しなかった事
諾成契約(だくせいけいやく)…売買契約は目的物の引渡しがなくても効力を生じる
所有権…動産について行使する権利
即時取得…民法192条
最判…最高裁判所の裁判例